
サッカーにサッカー用語、野球に野球用語があるように、アートにもジャンル特有の単語があります。アート用語を知らなくても作品は見られますが、知っている方がより幅広く作品を楽しめるのではないでしょうか。当欄ではアート用語を誰にでもわかる簡単な言葉でご説明します。アートをより深く味わうためにも、ここでの予習&復習をお忘れなく。
言葉本来の意味は「概念」や「着想」。アートの場合は、作品の根幹となる理念を指します。特に現代アートの場合、技術の上手さや仕上がりの美しさよりも「何を表現したいのか」が優先されるため、コンセプトが重要視されるのです。それを極端に押し進めたのが、物質的な造形物を伴わないプランだけの作品=コンセプチャル・アートです。しばしば現代アートは難解だと言われるのも、こうしたコンセプト重視の姿勢によるのでしょう。
展覧会の企画を行う人のこと。以前は美術館や博物館の学芸員がもっぱらその任にあたっていましたが、現在ではフリーランスで活動する人もいます。その仕事は、展覧会のテーマや理念を構築し、企画意図に沿ったアーティストを探し出して一つの展覧会を作り上げることです。テキスト執筆や記録作成、宣伝プランも担当し、資金調達を引き受けることもあります。ディレクターとプロデューサーの要素を併せ持った仕事です。
様々な素材を用いて一時的に空間を作り上げ、その空間自体を作品とする芸術表現です。言葉の本来の意味は「設置」「架設」ですが、アート作品の場合「空間構成」という意味合いが強まります。その場限りでの展示を基本とし、展覧会が終わったら作品は解体されます。作品を永続させない理由は、物理的に不可能ということもありますが、絵画や彫刻など既存のジャンルが持つある種の権威に反発するという意味合いも含まれています。
もっぱら作品の売買といったアートビジネスで運営されているギャラリー。いわゆる画商のこと。アート市場の相場形成に大きな役割を果しています。近年はインターネットの普及によりマーケットが拡大し、一部の有力ギャラリーは海外のアートフェアなどにも積極的に進出しています。アーティストをさまざまな形でサポートしながら一人前に育てる高い育成能力を持つ半面、ビジネスとして通用しない作家・作品に対してはシビアです。
アーティストが自らお金を払って一定期間展覧会を開催するギャラリーのこと。通常は1週間単位で料金が設定され、その間の表現の自由が原則的に保障されます。日本特有のシステムと言われており、現代アートの主戦場として最新動向の発信源となることも多々あります。今でもギャラリー業界の多数派を占めていますが、自らアーティストのプロモーションを行うコマーシャルギャラリーやアートフェアが増加した結果、その存在感はやや薄まっています。
美術、映画、演劇など、多目的に使用される会場のこと。インスタレーションやパフォーマンスなど既存のジャンルに当てはまらない表現が起こった1960年代後半から70年代前半の欧米で、それらに対応するスペースとして生まれました。運営主体は民営、公立、NPOなど様々です。例えば関西では、京都の「京都芸術センター」、神戸のC.A.Pが運営する「CAP STUDIO Y3」と「CAP CLUB Q2」は広義のオルタナティブスペースと言えるでしょう。
文 小吹隆文
関西を拠点に活動する美術ライター。詳しくはブログ「小吹隆文 アートのこぶ〆」を参照。
http://blog.livedoor.jp/artkobujime/