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たゆたう

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INTERVIEW WITH TAYUTAU 2010.08.02

作品について - 本当にたゆたうとしてやりたい表現は、2人でしかできない

&ART(以下、&) : どういう経緯でたゆたうを結成したのでしょうか。
にしもとひろこ(以下、N) : 私は京都造形芸術大学に通っていたころ軽音部に所属していました。学園祭で他の軽音部員が演奏しているところを見て「いいな」と思い、1曲作曲したのですが、1人で演奏するのが恥ずかしかったんです。その時に運よくアッコ(イガキアキコ)の友達から、「アッコはバイオリンが弾けるらしい」という情報を聞いて声をかけました。作った曲を私の部屋で演奏して聴かせたら気に入ってくれて、その後2人で練習して、学園祭で1曲だけ演奏しました。たゆたうとしての活動をはじめたのはそれからです。
イガキアキコ(以下、I) : それまで10年くらいバイオリン弾いてなかったのですが、それがバイオリンの演奏を再開するきっかけにもなりました。
& : お2人とも、もともと大学で専門的に音楽を学んでいたわけではないですが、今は活動の中心が音楽になっていますね。なぜ現在のような活動の形になっていったのでしょうか。
尾道・ハライソ珈琲にてのライブ

尾道・ハライソ珈琲にてのライブ

I : 私自身は現在の活動を、音楽が中心とは思っていません。私は在学中サウンドアート作品などを制作していたのですが、テーマは一貫して「境界について考える」というものでした。当時から音楽でも、デザインでも、絵を描くことでも、作るということに境界はないと思っていましたし、今でもそう思っています。例えば美術作品は、ギャラリーや美術館などの“ある意味”自然ではない場所で発表されるのが、日本では一般的だと思います。またそういった場所に訪れる人は、「これはアートだ」と身構えて作品を見に来る人が多い。私はそういったこと自体が不自然だと感じているんです。一人ひとりが「これは美術です」「これは音楽です」という境界線を引く意識をなくせば、もっと豊かになると思います。そういったことを突き詰めていくためにも、社会の中で自分自身が境界を持たずに活動をしていきたいと思い、大学卒業時に、フリーランスでやっていくことを決めて、ひろ(にしもとひろこ)を誘ったんです。2人ともデザインもやるし、音楽活動もやる。それは仕事でもあるし、表現活動でもあるし、社会に対するアプローチでもあるんです。
N : 先ほど「音楽が活動の中心」ということをおっしゃっていましたが、確かにたゆたうにとってライブは特別だと思います。他のことももちろん大事ですが、ライブを通して人とのつながりをダイレクトに感じてきましたし、「表現とは自分にとって何なんだろう」ということを自覚するきっかけにもなりました。
& : 境界ということとも関係しているかもしれませんが、私はたゆたうの音楽を、日常の延長線上にあるような表現と感じています。活動するうえで、そういったことは意識していますか。
I : そうですね。ご飯を作ることと、ライブをすることは一緒でありたいと思っています。鳥の声や車の音を聴くことと、誰かの演奏を聴くことは同じだと思います。人間の体は本来それくらい自由だと思うんです。

& : 楽曲のことについて伺います。たゆたうはベースとドラムなどのリズム隊がいないことで、リズムの自由度が高く、それがサウンドの個性になっていますね。
下北沢・440にてのライブ photo:相澤心也

下北沢・440にてのライブ photo:相澤心也

N : アッコがバイオリンを弾けるというのを聞き、一緒に演奏したことがたゆたうの始まりで、そのまま今までずっと続いているという感じなので、あまり意識はしていないんです。2人の交わるところがたゆたうだと思います。
I : 3人以上の編成で演奏することもあるのですが、2人の時とは違うアウトプットを意識しています。本当にたゆたうとしてやりたい表現は、2人でしかできないと思います。
& : どういう手順で作曲することが多いですか。
I : 場合によりけりなんですけど、私は「こういうテーマで曲を作りたい」と思い、大まかな歌詞の雰囲気を決めながら、それと並行して作曲することが多いです。その後歌メロを決めて、最後にアレンジを考えます。
N : 私も色々なパターンがありますね。何気なくギターを弾いていて「これいいな」というフレーズが出て来た時に、そこから制作することもあれば、頭の中にイメージした音を、「どこを抑えたらこの音が鳴るんだろう」と思いながら一音ずつ確かめていくこともあります。その後は何回も繰り返し弾きながら、「ここにはこの音を入れたいな」とか「この音はいらないな」というように、微調整していく感じです。そしてアッコに聴かせて、2人で合わせながら、「それいいな」とか「ここはもうちょっと“ポイン”と切った方がいいかな」というふうに話しながらアレンジしていきます。
I : そういう時、ひろはいつも細かいんですよ(笑)。「“ジャーン”と“ジャーン”の間に“ペロン”って入れていい?」みたいな(笑)。
N : 私の中では大ごとなんです(笑)。アッコが「その“ペロン”は何?」って思う時もあるかもしれないじゃないですか。2人で「“ペロン”をどうしよう」というのを共有したいんですよ(笑)。頭の中に具体的な音のイメージはあるけど、それを伝えようとすると擬音語になってしまうんです(笑)。
たゆたう

社会について - 自分の価値観と同じくらい、他人の価値観を大切に思うこと

& : たゆたうの音楽は誰にでもに受け入れられる聴きやすさと、前衛的な部分のバランスがとても絶妙ですね。
I : それは意識しています。自分たちがやっていることをメジャー志向だとは思っていないですが、「メジャーな曲しか聴かない」という人にも興味を持ってもらえる要素は持たせたいと思っています。そういうふうにしながら境界をなくしたいんです。音楽もやっているし、絵も描いている。様々なことを通して、人と人をつなげる、人と場をつなげる、場と場をつなげる、音とみんなをつなげる媒介になりたいと思っています。
イガキアキコさん

& : 境界を取り除きたいと思った時に、「境界があった方が心地いい、あった方が都合がいい」と考えている人を問題視するスタンスをとるのか、それとも享受するのかという選択肢がありますよね。
N : 境界をなくすということは、全員が同じ考え方や想いを持つことではなく「こういう人もいる」、「こういう考え方もある」ということを受け止めることだと思うんです。自分の価値観と同じくらい、他人の価値観を大切に思うことが、境界線をなくすことにつながると思います。
I : 「自分で考える」「自分で選ぶ」ということを一人ひとりが行っていくことが、境界をなくすことだと思うんです。話が大きくなりますが、それが苦手な人が多い根本的原因は、日本の教育にあると思うんです。例えば「何が必要なのか自分で感じ取る力」が身に付くかどうかは、小さなころからそれを経験できる環境にいるかどうかが重要だと思うんです。他の国と比べると、日本は子どもの頃に「鑑賞する」という教育がほとんどないんです。絵画を鑑賞するとか、音楽を聴くとか、感じるための教育がもっと必要だと思うんです。以前ベルギーに行った時に、現地で思ったのはベルギーの方の多くが、感じたり、見たり、聴いたりすることがとても好きだということでした。ベルギーでは国立裁判所で現代アートの展覧会をやっていて、裁判所内に巨大なオブジェが置いていたりするんです。小さいころからそれが当たり前だと思っているような環境なので、現地の方に「おもしろいですね」と言ったら、「普通ですよ。だって作品を置くスペースがあるじゃないですか」と言われました。日本では「自分で感じて考える」前に、「知識や価値観を植えつける」ような教育が主流になっているのではと思います。

京都について - 楽しいと感じていることや、やりたいことを素直にやれるのが理想

& : ライブの本数がすごく多いですし、今まで本当に色々な場所で演奏してきていますね。今まで京都以外に演奏に行った都市はどこでしょうか。
N : 北から新潟、東京、横浜、名古屋、金沢、滋賀、奈良、三重、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、高知、沖縄です。
& : 様々な都市で演奏してきて、京都にどういった印象を持っていますか。
ARTZONEにて音のワークショップ

ARTZONE(京都)にて音のワークショップ

I : 京都は悪く言えばどっちつかず、良く言えば色々なことができる場所だと思います。録音の仕事で東京に行くことがあるのですが、確かに東京に行けば演奏する場所も、チャンスもたくさんあるし、ニーズがあります。しかし京都でできることで、東京に行った途端にできなくなることは多いと感じています。二人とも地元が大阪なのですが、京都は大阪ともまた違うと思います。
& : お2人はたゆたうでの活動、個人での活動を通して、これまでに本当に様々な人たちとコラボレーションしてきていますね。
I : 私の場合は演劇、ダンス、ペインティングなど他ジャンルの表現とコラボレーションしています。ひろはペインティングのパフォーマンスをするので、歌うこととは違うアプローチで様々な表現者と関わることもあります。

& : イベントに参加するだけでなく、お2人自身も、人と人をつなげることを意識して活動しているように見えます。
N : 「このコミュニティーやジャンルだから」という意識でなく、つながりたいと思っている人が、もっとつながりやすくなるような環境ができればいいと思うんです。例えば京都内だけではなく、他の都市の人たちとつながっていけば、楽しいことがもっと増えていくと思うんです。
I : そういう状況が実現できるかどうかは、私たちも含め皆の頑張り次第だと思います。
N : たぶん「これ楽しいな」「こういうことをやりたいな」ということが、自分で分かっているうちは、大丈夫なんですよ。楽しいと感じていることや、やりたいことを素直にやれるのが理想だと思うんです。
にしもとひろこさん


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