アーティスト紹介

mama!milk

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INTERVIEW WITH MAMA!MILK 2010.12.16

活動について - 音が馴染む方法を長い時間をかけて探る

&ART(以下、&) : それぞれ楽器を演奏しはじめたきっかけを教えてください。
清水恒輔(以下、S) : 中学生の時から音楽がとても好きで、イギリスのパンクなどを聴いてました。自分でもバンドを組んで演奏したいと思ったのですが、ギターはコードを押さえないといけないから、ベースが一番簡単だと(笑)。そう思ったことがきっかけでしたね。
生駒祐子(以下、I) : 私は幼い時に、母に近所のオルガン教室に連れていってもらったことがはじまりですね。当時通っていた幼稚園の音楽の時間、みんなで歌を歌っていたのですが、私はあまりうまく歌えなかったんですね(笑)。担当の先生に母が「音楽教室に連れて行ってはどうでしょう」と言われ、通いはじめたようです。最初は足踏みオルガンの教室で、その後アコーディオンも演奏するようになりました。
& : 音楽家として音楽を仕事にしたい、と思い始めたのはいつ頃からですか。
mama!milk Fragrance of Notes ensemble リハーサル風景 2008年8月31日 原美術館(東京) 撮影:syasinger-z

mama!milk "Fragrance of Notes"
ensemble リハーサル風景 2008年8月31日
(東京) 撮影:syasinger-z

I : 「今日から音楽家」という決意をしたことはないです。私と恒輔さん、お互いに音楽が好きで、一緒に演奏してみたら楽しくて、mama!milkとして活動しているうちに、色々な方から「うちで演奏しませんか」と声をかけていただけるようになりました。その延長上に今があるような感じです。そういう意味では、私たちはとても幸運だと思います。
& : 楽曲はどちらが作ることが多いですか。
I : それぞれ作曲しますが、編曲は一緒にします。例えば、フレーズが浮かんだら、まず、コントラバスで弾いた時にどのように響くのか、恒輔さんに演奏してもらうんです。
S : 生楽器なので、楽器のどこを弾くかで音のキャラクターが大きく変化します。また、同じ音だとしても全てフラットにはなりません。
I : その響きを聴いて「それなら、アコーディオンはこうしよう」と組み合わせていく、といった感じです。
& : コミュニケーションしながら楽曲ができていくんですね。
mama!milk ステージ風景 2007年12月22日 CAFE ネコバコ (横川) 撮影:Satomi Kondo

mama!milk ステージ風景
2007年12月22日 CAFE ネコバコ (横川)
撮影:Satomi Kondo

I : mama!milkの音楽をジャンルで括るのは難しいのですが、作曲するうえで、今使っているアコーディオンとコントラバスの特性を活かしているということだけははっきりと言えます。

& : 清水さんはコントラバスの色々な部分を、様々な奏法で弾いて音を奏でていますよね。今のお話を伺って、今使っている楽器のことをよく知っているから、ああいった演奏ができるのではないかと思いました。
S : そういった「音符にならない要素」もとても大切です。調を決めたりすることも、難しいのですが、「ここだ」と思える調を見つけた時はうれしいですね。
I : 例えば、「コントラバスのここを聴かせたいからこの調にしよう」と決めた曲でも、楽器の編成が変われば、調を変えることが多いですね。
S : 編成に応じて4種類ほど調が変わる曲もあります。
I : 一緒に演奏する人が増えるたび、その人の良さを最大限引き出すために新しいアレンジを作ります。そう考えると本当にコミュニケーションしている感じですよね。
S : 人が変わるとアレンジが変わる。人を選んだ時点で、実はある程度方向性が決まっているのかもしれません。
& : トウヤマタケオさんやLITTLE CREATURESの栗原務さんとは、何年も一緒に演奏していますね。共演者との関係を、長い時間をかけて築いていっているような印象があります。
S : 時間はかかりますね。お互いに深いところに入った方が楽しいですし、音が馴染む方法を長い時間をかけて探るんです。
I : 演奏を何度も重ねていく時の、深い楽しさを味わってしまうと夢中になりますね。スコアを書いて、そのまま演奏してもらうこともありますが、それでも共演の方々とアイデアを出しあいながら、音楽が変化していくのが好きです。時間をかけて関係を築いていくのは、大変なこともありますけれど、楽しいですね。
& : mama!milkの音楽は楽器同士が、単純に調和しているのではなく、もっと豊かで広がりのある関係の中で、演奏として成り立っていると感じます。演奏する上で競演者との関係性をどのように捉えていますか。
S : それぞれの楽器の音が混じった時に、どのように聴こえているかを大切にしています。複数人で演奏するときも「複数のフレーズが重なっている」うえで、全員で一つの楽器のように響けばいいと思っています。
mama!milk

アルバム『Parade』について - すべての楽器が一斉に音を出した時の、混ざり合った音を録りたかった

& : 2010年にリリースされた新録アルバム『Parade』にて、試みたことを教えてください。
S : 前作の『Fragrance of Notes』を作った時、皆で同時に1本のマイクに向かって演奏して録音しました。その時からの流れで、本作でも一つひとつ楽器の前にマイクを立てるのではなく、ペアマイク2ペアのみで録音しました。音量のバランス、楽器の距離感などのプリプロダクションに時間をかけています。
I : すべての楽器が一斉に音を出した時の、混ざり合った音を録りたかったんです。
S : そこにマイクを持っていくというような感じですね。
& : 「混ざり合った音を聴かせたい」というテーマは、ライブでも録音でも一貫しているんですね。
I : 最近夢中になって取り組んでいます。
S : 今回は複数のホーンが入った編成のアンサンブルだったので、少人数で演奏する時と比べて音量や音色のバランスが複雑でした。現場で微妙に立ち位置を変えるなどしてコントロールしました。
I : こういった方法だと、共演者がどういう音を出しているのかということに敏感になります。より深く共演者の音を聴くことができているという実感を得られるところが魅力ですね。
& : 通常の録音よりも「聴く」ということが、重要になりますね。
S : 演奏するときはいつも、他の人の出す音をとても注意深く聴いています。自分のするべきことに必死だと、他の人の出している音が聴けないので、自分が演奏することに対して自由になることを心がけています。日頃から共演者の出す音を聴き、「この時はもっと抑えた方がいい」ということなどを意識し続け、イメージをしっかりもっておくと、録音時に「イメージにどれだけ近づけるか」という意識で演奏できます。『Parade』を録音をさせていただいたことで、本当に色々勉強になりました。
清水恒輔さん

& : 『Parade』はアルバルの構成も素晴らしかったですね。私はmama!milkの音楽を「うれしいこと、悲しいこと、ちょっと不思議なことなど、人生で出会う様々な出来事を1つのパフォーマンスやアルバムに凝縮した特別なもの」だと捉えています。だから1アルバムの印象を思い返すことが、人生をハイライトで思い返す感覚に似ていると思うんです。そういう意味で曲順や組み合わせが絶妙だと感じました。全体の構成はどういう風に決めていきましたか。
mama!milk 『Parade』(contrail farm)

mama!milk 『Parade』
(contrail farm)

S : どのアルバムでもそうなのですが、一枚にたくさんのことを詰め込まず、「全体を通して一つの物語になるように」という意識で制作しています。録音前は候補曲を仮の曲順で並べている状態なのですが、いつもギリギリまで曲を作っています(笑)。
I : 『Parade』の録音時も「この曲が終わって、次の曲がこういうふうに始まるから、ここを繋ぐにはこういう調、リズム、編成の曲が欲しいね」と、現場で曲を書いていました。
& : 特に“an Ode”を余韻の残るようなアレンジで、アルバムの最後に持ってくる構成が秀逸でした。豊かな人生を送ってきていないと、ああいった構成にはならないと感じました。
mama!milk アルバム「Parade」レコーディング風景 2010年1月28日 茅野市民館 (長野) 撮影:hiroshi nakata

mama!milk アルバム
「Parade」レコーディング風景
2010年1月28日 茅野市民館 (長野) 
撮影:hiroshi nakata

I : そうやって自分のものとして、私たちの音楽を味わっていただけるのはとてもうれしいことです。今まで聴いて下さった方に「こういった情景が浮かんだ」「こんなことを思った」「楽しい気分になった」「切ない気分になった」といった様々な感想をいただいてきました。音楽はそれを聴く人のものですし、様々な形で受け取っていただけることは本当に素晴らしいことだと思います。mama!milkの音楽に歌詞がないことも、多くの方に様々な受け止め方をしていただける要因かもしれません。

京都について - まだまだこの場所で、素敵な人やものと出会えると感じています

& : 今まで何度か木屋町の元立誠小学校の講堂で演奏されていますが、演奏してみてどういったことを感じましたか。
mama!milk Parade emsemble リハーサル風景 2010年5月8日

mama!milk "Parade" emsemble 
リハーサル風景 2010年5月8日
立誠小学校(京都) 撮影:mama!milk

S : 音がナチュラルで演奏がしやすいですね。リラックスして音楽と向き合える場所だと思います。
I : 普通は廃校になったら、人の出入りがなくなりますが、立誠小学校は地元の方にとても大事にされていますよね。そういったことから生まれる独特の空気感も魅力的です。京都にはこういう場所が多いと思います。
& : 京都にお住まいですが、お2人にとって京都の魅力はどんなところでしょうか。
I : 以前は、京都は街自体がコンパクトだから様々なものにすぐ手が届いてしまうような気がしていたんです。でも知れば知るほど豊かで、まだまだ未知の部分もある。そういう奥深さに安心します。まだまだこの場所で、素敵な人やものと出会えると感じています。
& : 京都は面積は小さいですが、その中での歴史の重なり方や密度は言い知れないですよね。
mama!milk 演奏風景 2004年8月 法然院(京都) 撮影:syasinger-z

mama!milk 演奏風景 2004年8月 
法然院(京都) 撮影:syasinger-z

I : 演奏旅行から京都に帰ってくると、京都の居心地の良さと同時に、懐の深さを感じます。何世紀も前から先人が積み重ねてきた京都の文化のことを、もっともっと知りたいですね。

& : 京都を拠点にしている理由を教えていただけますでしょうか。
S : 街がコンパクトなので、人間関係も適度にコンパクトですし、密度が濃い人間関係ができやすいですよね。制作していく中で「こういう人がいないか」と探したら意外と近くにいて、何か一緒に作っていけるような活動のしやすさはあります。
& : 京都を拠点にしている様々なアーティストとお知り合いですが、京都のアーティストに対してどういった印象を持っていますか。
I : mama!milkのコンサートを京都以外で行う時、その都市の人は私たちに対して「コンサートをじっくり作りあげる」という印象を受けるようですね。それはmama!milkだけに限ったことではなく、普段から京都でものを作っている人には、そういうスタンスの人が多いような気がします。
S : じっくり取り組める環境が与えられるととても楽しいですね。
I : 京都にいると暮らしの中からそういうペースに馴れていく気がします。
生駒祐子さん

社会について - 日本的ということは大事にしたいことの一つです

& : 海外の都市でも演奏してきていますが、国内で演奏する時とリアクションの違いはありますか。
I : 国内で演奏するときは、ヨーロッパ的だと言われることもありますが、海外では日本的だと言われることが多いです。そういう反応を聞くと、自分たちが思っている以上にmama!milkの音楽がアジア人であること、日本人であること、京都で暮らしていることの空気感をまとっているんだと感じます。そう感じてから、日本のことや、自分の暮らしている京都のことをもっと深く知りたいと思いはじめました。
mama!milk

& : 日本的というのは意外ですね。
mama!milk 演奏風景 2005年7月6日 Torino@notte(ヴェネツィア) 撮影:yu nara

mama!milk 演奏風景 2005年7月6日
Torino@notte(ヴェネツィア) 撮影:yu nara

I : その理由として、「音の立ち上がりや、消え方の細やかさ」が日本人特有だと言われたことがあります。確かにそこは神経を注いでいるところですし、私自身も日本人の音楽はジャンルを問わず繊細に組み立てられていると感じています。この日本的ということは大事にしたいことの一つです。
& : これまで様々な層の方がmama!milkの音楽を聴いてきたと思います。お2人はどういう人にmama!milkの音楽を聴いてほしいですか。
I : 「こういう人に聴いてほしい」という限定したイメージはないです。実際、色々な方に聴いていただいています。
S : コンサートするときは幅広い年齢層の方が、来やすい環境を作っていきたいと考えています。
I : ライブやコンサートに足を運んでいただいたり、CDやレコードを手にとっていただいてmama!milkの音楽を聴いていただく。それは一期一会のご縁だと思っています。そんなご縁をこれからも大切にしたいと思っています。


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