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林勇気

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INTERVIEW WITH HAYASHI YUKI Vol.2 2/2 2014.02.15

世界の根底にあるもの その5 - 移動することに対する憧れ

&ART(以下、&) : それで先週のインタビュー原稿を読んでどうだったですか。
林勇気(以下、H) : 僕の発言は矛盾を孕んでるなと思いながら。でも矛盾もあるよなと思ってた。一貫性はたぶんあるけど、矛盾した部分もやっぱりあるかなと。まあそれがリアルなことかなと思って。
& : そうですね、制作における考え自体が必ずしも矛盾を解消してつくる必要はないので。矛盾してるなら、矛盾してること自体も作家の中での合理性みたいなのはあると思うんですよね。
landscape - marine snow -

「landscape - marine snow -」
2013 WELTKUNSTZIMMERでの展示風景
photo by Takuma Uematsu

H : それに関して言えば、たぶん意図はけっこうクリアになってるから。そういう部分はクリアかなぁと思います。読み返してみておもしろかった。あと、妄想っていう言葉はちょっと違うかなって思ってて。並走する…世界が並走してるとかそういうほうがしっくりくるかなぁって。まあ妄想といえば妄想やけど。
& : 例えば、その…妄想っていう言葉を変えるとして、想像とか空想とかあるじゃないですか。
H : も、違う様な気がする。だから並走する世界があるという…感じがするかな。妄想っていう言葉自体ちょっと引っかかってて、実は。「妄想じゃないよな」っていうふうに思ってたから。
& : ああ。それはなんていうか…、林さんにとって妄想っていうものはどういうイメージなんですか。別に正しい言語の意味がどうこうっていうことじゃなくて、林さんが抱いている妄想っていう言葉がどういうニュアンスを含んでいるから違うと思うんですか。
H : わかんないけど、ははは(笑)。
& : いや、わかんないんですか(笑)。
H : 妄想…なんか違うなって、妄想も想像も若干違う様な気がするんよね、なんか…。「世界がある」というかそういう感じの方が近いですね。
& : 世界がある?
H : うん、ニュアンスとしては。
& : それは例えば歩いてる時とかにあった世界じゃなくて、寝る前に想像してたものも並走する世界って言った方がしっくりくる感じですか。
H : うん。難しいね、言葉って。
& : 林さんにとって現実の中で船がどういうものだったか聞きたいんですけど、例えば船に対する現実の世界での思い出とかないですか?子供の頃旅行で乗ったとか。
H : 思い出してみたけど、乗ったことない。
& : おお、ないんすか。
H : うん、ない。全然なくて、ただ海がけっこう特別なものだったかなぁと。子供の頃普段あまり目にする機会がないから。
& : ああ、なるほど。海、でも大宮に住んでたんだったら近所にないんじゃないですか、全然。
H : うん、ないから、ある種すごい特別なもの。
& : ああ、行ったことはあったんですか。
H : 行ったことはもちろんあります。
& : あれですか、舞鶴のほうですか、北の方ですか。
H : 島根の方とか、白浜も行ったことあるけど。

& : 歩いてて並走するっていうのも動いていて、船も何かを運んだり移動するものなので動くものじゃないですか。そういう意味では「動く」というキーワードでゆるーく繋がってる感じっていうのは…。
H : うんうんうん。
& : あるような気もしますけど。
H : 移動することに対する憧れみたいなものはあったかもしれない。ここじゃないっていう…この場所じゃないとこ。
& : うん。
H : でもその船が常に動いてたかどうかまではあまり思い出せない、ほとんど固定してたかもしれない。
& : 固定されてたらなんか変ですけどね。
H : 港にだいたい停泊している状態。
& : ああ、なんかそれって船である意味がない感じがするじゃないですか(笑)。
H : そうそう(笑)。でも動いてた時もありました。
& : 前もちょっと聞いたんですけど。並走する世界ができたきっかけみたいなのって…。
H : きっかけはなくて、常にたぶん。近くにあった。
& : もの心ついた時からもうすでにあるっていうことですか。
H : …。
& : それは思い出すの無理…かなぁ(笑)。じゃあ内容を誰かに喋ったことってありますか。
H : ないない。
& : えっ、今回初めて喋ったんですか。
H : うん、そうそう。
& : 友達がいるとして。
H : うん。
& : 何気ない話で話題に出る可能性なくはないじゃないですか。
H : ほぼなかったんじゃないかなぁ。
& : じゃあ「昨日船乗ってこんなことがあってさぁ」って言わないんですか、誰にも。
H : …。
& : ははは(笑)。
林勇気 さん

世界の根底にあるもの その6 - 現実世界のリアリティが薄かったのかもしれない

H : もしかしたら現実世界のリアリティが薄かったのかもしれないというのは思いますね。そういうことはない?
& : う~ん。僕は中学校に入るときにはもう…その、頭の中でストーリーをつくったりすることってなかったと思うんですよ。で、逆にそのくらいからの方が現実に対する…現実に生きているっていう印象は薄いです。
H : ああ。
& : それまでの方がはっきりしてたような気がします。
H : ないかもしれないね、リアリティ、今なお。どうやろね。
& : じゃあ作品に対するリアリティみたいなのはどうなんですか。
H : どうなんやろう、リアリティというか…、わかんないけどね、「リアリティだ」と思ってやってるわけじゃないと思うしね。
& : 先週、「インターネットにどっぷりの人とか、ゲームにどっぷりの人とか」「現実以外に世界を持つことが心地いい人」っていうのが林さん以外にいるって言ってたじゃないですか。そういう人の現実味っていうのが、もしかしたら想像の世界と現実の世界の半々になってるっていう言い方もできるかもしれないじゃないですか。生きてる実感のすべてを現実に捧げてないというか。みたいな感覚はありますか?
H : それは…あります。
& : 一応は現実とちゃんと折り合いをつけて生きている今でも、リアリティの所在ってまだ分離してるような感じですか。
H : 今は、もう一つの世界はすごく希薄で、現実世界に対してもけっこう希薄(笑)。
& : はははは(笑)。じゃあ総合で希薄になってるってことですよね。
H :昔は…たぶん半々だったんかもしれない。半々だったっていう言い方が正しいかはわかんないですけど。今は並走する世界もフェイドアウトしてると思うけど、現実に対するリアリティもないままみたいな(笑)。
& : ははは(笑)。いやわかります、わかります。
H : なんかリアリティがないんよね、あんまり、わかんない。
& : わかります、すごいそれはわかります。
H : みんなそうなんかな。
& :いやぁ…。
H : 「リアリティ溢れてます」って言って生きてる人いるのかなぁ。マトリックスだからね、たぶん。
& :え?
H : マトリックス。マトリックス観た?
林勇気 さん

& : 観ました、最初のやつは観ました。
H : マトリックスを観たときに、「こういう感じのリアリティのなさってあるだろな」って思った。2、3は面白かった?
& : 観てないっす。
H : ああ、正解(笑)。なんかあんまりおもしろくないなぁと思ってて。最初のとアニマトリックスは面白かった。
& : ああ、面白かったですか。
H : …リアリティがないね。
& : そうですね。リアリティがないのと作品つくってるのとは何かしら関係があるんですか。
H :…。
& : わかんないですか(笑)。
H : たまにすごいリアリティを感じる瞬間はあるんやけど、作品以外のときに。
& : 以外のときですか。
the world - walking man -

「the world - walking man -」 2013 video still

H : 「あっ」って思う時がある。作品も…自分のつくってるものも…(机を指して)こういうリアリティじゃないから、たぶん。物質的なリアリティじゃない。
& : そうなんですよね…。リアリティが欠如している感じっていうのは作品に出てる気がします。
H : ああ、なるほど。それはそうかも。それはでも無意識の内に出てるんかな。
& :林さんがあえてやってなかったら、そういうことなんじゃないですか。
H : つくるときはもっと…、作品の意図を考えたりしてつくってたりとか、社会の状況を考えてつくったりしてるから。
& : 先週の話を聞いて思ったんですけど、インターネットの状況とか、ゲームをやってモニターの向こうにある世界が認識できる感じっていうのを、客観的にテーマにしてる感じが、あんまりないんですよ。あえて選び取ってるっていうほど、選択の余地がなくて、もっとなんていうか、こう…テーマの方に林さんが選ばれてつくってるようなイメージはちょっとあったりするんですよ。
H : 両方かな。わかんないけど。
& : 先週から、テーマの側が林さんを引っ張ってる話を中心にしてるというか。
H :なるほど。僕がやろうとしてることは…多くの人の経験に置き換えられるとは思ってるかなぁ。今の時代だからこそ、僕が経験していることと、多くの人が経験していることがより明確になるというか…。そういう感じですね。
& : ははは(笑)。
H : 色んな人が僕と同じ経験をしているんじゃないかと思いますね。自分の内でも外でも世界があって、それと一緒に時間を過ごしていて、テレビゲームやインターネットをやって、自分の内とか外にあった世界に近いものが重なっていくような状況。
& :同じような経験をしてきた人がいるとしても、人それぞれの経緯もあるから、作品には林さんの特有の感覚みたいなのが出てると思うんですよ。だから作品を観て、100%共感できるということは在り得ないし、「違うわ」っていうところもあると思うし。特有の経験に依るところっていうのも、まああるんじゃないかと。

世界の根底にあるもの その7 - リアリティがないまま、徐々に現実を受け入れていってる

& : あと、一般的にインターネットが普及したのはWindows95の登場による影響が大きいと言われていますが、色んな人が共有できる状況がそこから広まっていったということがあって。一方林さんは先週“世界がもう一つある状態”が高校卒業までは続いていたと話してましたよね。高校卒業が94年なんですよ。
H : 詳しいですね(笑)。
& : 調べたんですよ(笑)。その次の年にWindows95が出てるんです。で、97年から映像制作し始めてるんですよ。このタイミングは関連してるような気がしますけど。
H : フェイドアウトしていってる感じがするけど。
& : ああ。
H : 特別な経験があったとかそういうのではなくて。
& : でも妄想とか空想をしなくなったとき、現実の何かで代替していくということは誰にでもあると思うんです。“並走する世界”の中でやれてたこと、やろうとしてたことが、インターネットに置き換わったのかもしれないし、自分の作品をつくることに置き換わったのかもしれないし。それでもその過程の中で抜け落ちたものも、新たに獲得したものもあると思うんですよ。それがなんなのかなぁっていう…。
あること being/something

「あること being/something」
2011 Video still

H : 明確な因果関係はよくわからないかなぁ。でも子供の頃の経験が作品に反映されてる部分はあると思いますね、やっぱり。子供の頃の経験…。
& : 今…。
H : うん。
& : 今も並走する世界をつくろうと思えば、つくれるということを先週言ってたんですよ。「それ本当にできるの?」と思ってたんですけど。
H : できる気がするけどね、わかんないけど、うん。
& : それってなんで、今ないんですかね…。必要ないんですかね。
H : 必要なくなったのかもね。原因はわからないけど。
& : でも作品つくって仕事して、日常生活を送る中で、現実味みたいなものが透過50%くらいになってるわけじゃないですか。
H : まあ、リアリティはないけど…。
& : つくり出せるんであれば、つくったほうが楽しいような気がしますけど。
H : もしかしたら、すごい集中力が必要なのかもしれないなぁって今ふと思った。…リアリティがないまま、徐々に現実を受け入れていってるってことなんかな?劇的な変化があったわけじゃなくて。
& : 僕は劇的な出来事があったんですよね。大量におもちゃを捨てられたことがあって。それからもう一回集めようって気が一切しない(笑)。
H : なるほど、なるほど。
& : それが小5か小6くらいだと思うんですよ、たぶん。
H :じゃあ、ものから想像してたん?

& : 媒介になる何かは必要なんですよ、イメージなりあって…。それは別に物質じゃなくてもいいんです。絵でもいいですし。あと先週「とどめる」か「残す」かっていう話をしてたじゃないですか。
H : ああ、うん。
& : 作品をつくることによって、林さん自身が何を得ようとしているのかっていう、極めて林さんの個人的なところに依った問題だと思うんですけど。なぜ「撮影してものをとどめる」っていう表現方法を選んでるか…。
H : あ、とどめたものでつくってる。
& :そうそうそう。そうです。「とどめる」と「残す」の違いに関して思ったのは、「残す」っていうのは、「物質を残す」っていう印象がある。で、残したものが時間の経過の影響を受けるっていうイメージがあって。でもとどめるっていうと、そのものの時間を止めるっていうイメージがあって…。
H : うんうん、そういうこと、そういうこと。
& : 劣化しないと思うんですよ。その状態のまま滞在させるというか、言い換えると…永遠にしてしまうみたいな印象があるかなと。まあ辞書で引くと正確には違うみたいなんですけど、イメージとしてそういう差があるかなと。
H : 「残す」っていうのは、やっぱり物質的な側面が強い気がするかな。「とどめる」は「時間的・空間的に」という意味が強い気がするのでしっくりくるというか…。
& : そういう意味で言うと確かに「とどめる」の方が近いのかなって思ったんですけど。なんで…流れないようにしたいのか、とどめたいのかという…。先週林さんが「雪が溶けてなくなっちゃうとか、置いてある空き缶が次来たときにはたぶんなくなってるとかっていうことに、目が向いちゃう」「とどめておいたものが組み合わさったり、重なったりして世界が出来上がっていく」「流れちゃうからとどめておかないと。雪が解けちゃうから」と言っていたんですけど、理由の説明がないじゃないですか。
H : うん。
& : なぜかっていうこの理由に、林さんがすごく俯瞰してテーマを選び取ってきたっていう側面と、テーマから林さんの方が選ばれてる側面、両方が集約されてるんじゃないかと。
H : うん、そうそう。
& : なぜっていうところが、結構重要かなと僕は思ったんですよ。
H : 僕のやってることはものの集積じゃなくて、流れていく時間や空間の中で、その瞬間その瞬間の時間や場所やデータの断片をとどめて、もうひとつの世界をつくる行為だと思いますね。
林勇気 さん


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