アーティスト紹介

林勇気

  • 作品集(映像)
  • 作品集(画像)
  • インタビュー
  • スケジュール
  • プロフィール

INTERVIEW WITH HAYASHI YUKI Vol.2 1/2 2014.02.08

世界の根底にあるもの その1 - ノストラダムスの予言を信じていて世界がほろびるのがこわかった

&ART(以下、&) : 今WEBに載ってる色んなインタビューでは、林さんがすでに言葉にしてるコンセプトを広げるみたいな質問内容が多かったんで、今回もうちょっと「どうやってそういう感覚が培われたのか」「コンセプトのさらに根底にある思想は何か」っていうこととかを、突っ込んで聞けたらいいなと思っています。
林勇気(以下、H) : はい。
& : そのために前もってメールで「子供の頃不安に感じていたこと」について質問して、「終末論的(核とか、自然災害とか)なものが流行していたり、ノストラダムスの予言を信じていて世界がほろびるのがこわかったです。その時に自身の死を意識したり、あらゆることに終りがあると気づきました。それから無ってなんだろうと布団の中で考えていたのもこわかったです。色の存在しない状態とか、無音すら存在しない音とか。何もないってどういうことだろうとか。いまでもそういったことを考えたりします。」という回答をもらったんですけど。一つの解釈として、子供の頃、現実のそういう不安から逃れるために妄想でつくり出していた世界に、作品の原型があるんじゃないかと考えたんですよ。林さんの回答を一個ずつ検証していくと、まず林さんの作品にはストーリーがないじゃないですか。例えば、兵庫県立美術館で展示したときに…。
H : うん、うん。
& : 学芸員の小林公さんが作品に寄せたテキストの中で「林は円環の閉じた世界をいくつも想像し、主人公に永遠の歩みを与えてきた」と書いてるんですけど、明確なストーリーがないっていうということが、「死ぬことへの恐怖がない世界」とイコールになるんじゃないかという。「死ぬことが前提にある虚しさがない世界」っていうのがループする世界なんじゃないかというのがまず一つ印象としてあって。
H : うん。
林勇気 さん

& : あと最近の傾向として、作品に浮遊感があって、重力から自由になってる表現というのがあると思うんですけど、重力から解放されることが、不安の解消を象徴してる部分があるんじゃないかと。
Planetarium

「Planetarium」
2012 柏プラネタリウムでの展示風景 
photo by OMOTE Nobutada

H : 重力から解放されてるっていうのは、ネットとかにたくさんのデータが漂ってる状況が作品に現れているのかなぁと感じていて。子供の頃、色んなものに終わりがあると気付いたことが作品に何か影響を及ぼしてるとすれば、たくさんの記録された写真とかを素材に使ってること自体だと思いますね。すべてが過ぎ去ってしまったり、失われていく過程の中で生じた記憶みたいなものがすごくたくさんネット上にあったりとか、写真がアップされたりハードディスクに保存されていたりとか、そういう状況そのものに向けていて、たぶんそこに繋がるのかなぁっていう気が…。無意識なのか意識的なのかわからないけど、みんなスマートフォンで写真をパシャパシャ撮ったりするのは、やっぱりどこかでとどめておきたいとか、記憶を共有したいとか、そういうのがあると思うんですけど。僕はそこを見て、その状況を作品化しようとしてると思う。終わりがあるから、みんなそういうことをするのかなぁと。
& : もちろんインターネットのシェアしてるイメージとか、モニターの向こうにある共有されてる空間も“現実と違うもう一つの世界”として関連してるということは前提にありつつ、林さんの作品で描かれてる世界の印象として「その世界が何か」っていうことの根っこにあるのが、「不安から自由になる世界」なんじゃないかと。こういう不安があるから、こういう世界をつくり出したんじゃないかという…。
H : だから、不安という言葉ではないかもしれない。状況の認識というか。子供の頃には「怖いな」っていう思いがあったんやけど、今はもうちょっと何か、常に終わり続けているという状況にどうしようもない気分になってることに対して、画面の向こう側に何かを見出そうとしているのかもしれない。諦め…違うかな?諦めというか、そういうものだと思って。でも言わんとしていることはわかります。
& : その、なんていうか…今まさに不安に感じているかっていうことではないんですけど。
H : 子供のころの不安に対してっていうこと?
& : そうです、そうです。林さんが“現実と違うもう一つの世界”に対して、今現在興味を持つことになったきっかけの、スタートしたところに不安というものがあったんじゃないかっていうことです。
H : あー、なるほど、なるほど。それはもしかしたら繋がってる部分もあるかもしれないなぁとは思いますね、うんうん。子供のころの不安?それは不安だった、僕はノストラダムスの予言通り世界が滅びると思っていたからね。他にも終末論が世間にあふれている時代だったように思いますし。

世界の根底にあるもの その2 - 現実とそうでないものが並走している感じ

& : ああ、そういうことについてとかですよね。だからどの段階でその不安が生まれていたかみたいな、そういうルーツがわかったらおもしろいなと思ったんですけど。
the world and fragments of the world

「the world and fragments of the world」
2010 video still
Photo by OMOTE Nobutada

H : 新しいメディアがでてきた状況とか…、すごいわかりやすく言えばテレビゲームが出てきたときに壁、モニターの向こうにある世界が認識できたりとか、インターネットが出てきたときに画面の向こうから繋がってる感じがしたとか。そこの部分が作品に影響を与えているというか、作品の意図に繋がっているというか。
なんか、その、子供時代に…う~ん…関係ある気もするね。
& : え?
H : 関係ある気もするね、もうちょっと深く掘り下げて思い出して辿って行けば何かあるのかもしれない。特に初期の作品はもしかしたら余計にそういう部分があるかもしれない。つくり出すきっかけとしてだよね?
& : きっかけもそうですし、やっぱり根底にあるもの、作品の中で一貫してる部分ってあると思うんですよ。林さんが意識してる以上に、感覚が培われた要因みたいなのがあるような気がしていて、そこの話を…。
H : なるほど、なるほど。なんかこう、普通に街を歩いてるけど、もう一つ別の世界が自分の中にあって、というような感覚は子供の頃からあったかも。
& :今、林さんが言ったような、歩いていて頭の中に想像している別のものがあったということとか、頭の中の空間のあり方というのがインターネットやゲームと出会う前からある程度あって…。
H : わかった。
& :あっ、ありました(笑)?
H : うん(笑)。そうそう、現実とそうでないものが並走している感じというのはあった。
& :だから、原型として想像したり妄想したりする中でそういうイメージのつくり方があったうえで、ネット上でのイメージのあり方みたいなことが、コンセプトになっていったっていう経緯がもしかしたらあるんじゃないかなという話…(笑)。
H : インターネットの状況とか、ゲームをやってモニターの向こうにある世界が認識できる感じと、世界が並走してる感じは、少し近い部分もあるのかもしれないと思います。でもたぶん作品にするときはもっとドライなもので。
& : ああ、もちろんそうだと思うんですけど。
H : そこはもっと距離を置いて、自分の世界じゃなくて、今起こってる状況や社会的な状況とか、メディアを介して見た世界とかを作品化しようと…そこの部分はかなりドライにやってるんじゃないかな。そういうふうに思うけど、気付きの部分でそこが結びついているかもしれないかなぁと。…うん。関係あるかもしれないね、それは。
& : その部分がもうちょっと具体的になったら、おもしろいなぁって思ったんです。子供の頃って色々なことを考えて遊んだりするじゃないですか。例えば僕はいつもおもちゃで遊んでたんですけど、すごく具体的にストーリーをつくっていくんですよ。一つのおもちゃを自分と仮定して、ストーリーをダーッと編集していくみたいな。林さんは並走していた世界の中身ってどういうものだったか覚えていますか。
H : 覚えてる、覚えてる。

& : どんなものでしたか。
H : それ、恥ずかしいな(笑)。すごい大きい船に住んでるとかっていうのをずっと考えたりして。大きい船の中に街が…、船の中が全部街になってて、そこに住んでた。毎日その続きを考えたり。他は歩いて下校している時とかに、頭の中で違う世界を一人で歩いているみたいな感覚があった。全然周りは見えてたと思うんやけど。
& : それは実際に歩きながらってことですか。
H : 実際に歩きながらも全く別の世界のことを考えて…その世界がどんなんだったかっていうのは覚えてないですけど。それは例えば携帯で街を歩きながら、全然別の場所を歩いてるけど、東京のレストランを調べてるみたいな感じに近いかもしれないなぁと。だからもしかしたら歩きながらアメリカに住んでいる友達とメールでやりとりしていて、歩いている景色は流れてるけど全然違うところにアクセスしてるっていう感じが近いのかもしれない。
& : もう一つの世界について、何か他に思い出すことはありますか。
H : 中世のような世界観の中で、自分が野球か何かのスポーツ選手になるという世界もあった。もっと思い出せばありそうやけど。
& : その世界は自分の思い通りになってたんですか?
H : 思い通りになってたと思う、たぶん。思い通りというか…。でも劇的なことが起こるわけではなかった。映画を観た後とかは劇的になってたかもしれないですけど。
& : 影響されて?
H : うん。現実以外に世界を持つことが心地よかったのかもしれないですね。それがずっと続いてるのかもしれない。
& : ああ。
H : それはでも多分、僕特有の何かじゃなくて、そういう人は多いんじゃないかな。いわゆるインターネットどっぷりの人とか、ゲームにどっぷりの人もいるじゃないですか。
& : そうですね。
H : 現実以外のところに場所を求めてる人というのはすごく多いけど、子供の時はゲームにしてもインターネットにしても、そういうツールがあんまりないじゃないですか。ネットやゲームが出てきたことでより可視化されてるのかなぁっていう。ネットゲームとかって、現実のお金をつぎ込んでオークションでアイテムを買ったりするじゃないですか、10万とか20万のレアアイテムをオークションで買いとったりするのって倒錯してるというか、逆転した人の行動だと思うし。そういう人を作品化してるわけじゃないけど、そういう状況みたいなのを考えたりして作品化してる。その根元の部分が、子供の頃にもう一つ世界を持っていたっていう…たぶんそれは大なり小なり誰しもあることかなぁと。
林勇気 さん

世界の根底にあるもの その3 - 並走してる世界があったことが、今の状況に目を向けるきっかけになった

& : 世界の成り立ちと、その世界が具体的にどういう世界だったかということは、たぶん個人差けっこうあると思うんです。その仮定としてさっき言ってたのが、「不安の反対の世界っていうのが幼い頃の妄想としてあって、今の林さんの作品と共通点があるんじゃないか」という話なんです。
H : うん。
& : まあこれ本当にあれですけど、作品になる以前の話をしている。
H : そういうことか、そういうことよね。う~ん。子供の頃ってそういうのなかった?一つの世界を別の場所に…。
& : 僕は昔っから想像のタイプっていうより編集のタイプで。例えば…。
H : ああ、さっき言ってたみたいにおもちゃを組み合わせてストーリーをつくっていったりとか。
& : あと頭の中で想像する時も、このアニメのこのキャラクターがいてこいつはこういう設定で、このストーリーの中で、こっちのアニメの設定と組み合わせてみたいなことをしてたんでオリジナリティーはそんなにないんですよ。
H : ああ。
& : だからその辺はけっこう…。
H : 若干違うかも。
& : 人それぞれ個人差あると思うんです。
H : なんかでもけっこう強固というか、強度のある世界だった気がします。
& : それは現実と…そっちの世界だとどっちの方が居心地よかったんですか。
H : その時によりけり(笑)。
& : ああ、そうですか(笑)。
H : 現実で楽しい時もあれば…、もうひとつの世界が居心地いいときもありましたね。
& : どんな時に妄想するか、というのもありますよね。
H : いや、もうけっこういつもそんなことを考えてた。
& : あ、いつもなんですか(笑)。
H : よく、すごい、そういうことを。なんかあんまり現実を見てなかったのかなぁ…うん。
& : 現在林さんが何を考えているのかというのは割と普段聞いたりするんで、今考えていることの根底に何があるかっていうことに興味があるというか。
H : うん、おもしろい、おもしろい。
林勇気 さん

& : だって作品を具体的に形にするときに、必ず影響は与えているような気はするんですよ。
H : うん、それはそうかも。幼少の頃の出来事とか関係あるんだろうね。
& : すごくデフォルメしたインターネットの視覚イメージとして、情報がバーチャルに浮かんでいる印象というのがあるとして、その世界のあり方にシンパシーを感じるとか、興味を感じるという要因がそこにあるような気がするんですよ。
H : うん、僕もあるような気がする、今日話してみて。たぶん並走してる世界があったことが今の状況に目を向けるきっかけになったり。
& :だからインターネットが普及する前から、空間が並走しているという感覚が林さんにあったんですよね、きっと。
H : それが新しいメディアの状況に気が付く原点になっているというか、近いものがあるから目を向けやすかったかもしれないです。
& : 林さん以外にも、同じような体験を経て作品をつくってる人がいっぱいいるはずなのに、林さんが今のような表現を選び取るということには、やっぱり何か理由があると思うし、それを作品化するということがすごくストレートな自己達成になるというか。自分の本来持っている空間感覚に近いものを具現化できるような、すごくバチッとはまるものが、今やっている表現にあって、そこに向かってるような気がしますけど。
H : うんうん。
& : 船の中では普通に生活してたんですか。
H : うん、そうそう。
& : 事件が起こったりということはあまりないんですか。
H : 学校に行ったり…。
& : 何が楽しいんですか。
H : もうその…、すごいでかい船で。現実的じゃないくらいでかい船。
& : その船に居ること自体が楽しいんですか。
H : そうそう。
& : 船は動いてるんですか。
H : 動いてる時と停まってる時があって。だから世界そのものが船だったのかもしれない。
& : 林さんが歩いてるところに、船が並走してるということではないんですか。
H : 歩いてる時に並走してた世界とはまた違う感じ。
& : あ、また違うやつなんですか。
H : 船を考えてたのは布団の中が多かったかな。
& : じゃあ、歩いている時に並走してるのは…。
H : 覚えてない(笑)。
& : 自分がその空間の中にいるっていう過程で歩いてる?
H : 並走した世界で一緒に歩いてるんじゃない場合もある。重なってる部分もあるかも。
& : 今つくっているものと、船っていうイメージとで共通するものを見出せそうな気はします。
H : コアなインタビューですね(笑)。だいぶコアな語ったことのない話(笑)。

世界の根底にあるもの その4 - とどめておいたものが組み合わさったり、重なったりして世界が出来上がっていく

H : 例えばこの煙草の吸殻が…。
& : はい。
H :たぶん次来た時にはなくなってるとか、雪が溶けてなくなっちゃうとか、置いてある空き缶が次来たときにはたぶんなくなってるとかっていうことに、目が向いちゃう。同じことじゃない?…すべて流れていっちゃうっていうのと。
& : そういうものを撮影するわけじゃないですか、“撮影する”って“記録する”ってことじゃないですか、“ストックしていく”ってことじゃないですか。それって結局、残したいんじゃないですか?
H : 残したいんかな。わかんないな。わかんないけどそういうことなのかも(笑)。
& : それ自体がどうなのかって。
H : 残したいというか…流れていくものを残したいっていうほど強い思いじゃなくて、しおりを本に挟むみたいな感じで僕は撮影してますね。時間の中にしおりを挟むみたいな。
& : 林さんが撮影する行為って、“現実と違うもう一つの世界”に撮影したものを移すような感じじゃないですか。それってちょっとまたしおりに挟むのとはフェーズが違う感じがあります。
H : うん、うん。
& : それって…まあでも残すともちょっと違うかもしれないですね。
H : とどめておく、残すんじゃなくてとどめておくというか…。
& : それはなぜとどめておきたいんですか?
H : とどめておいたものが組み合わさったり、重なったりして世界が出来上がっていくのかなぁって思いますけど。流れちゃうからとどめておかないと。雪が解けちゃうからですね。違う?
& : いや、あの…。
すべての終りに

「すべての終りに」 2012 video still

H :だから時間を組み合わせてアニメーションをつくってるのかなと思ったりする。なんか、うん…劣化したり失われていくものに対して残したいのかなやっぱり…。残してそこで一つ世界をつくりたいとか、そういうことを考えているのかもしれないです。
& : 客観的に見ると写し取って残そうとしている感じに見えますけどね。
H : はははっ(笑)。残したい…残すのととどめるっていうのは違うのかな。同じかもしれないですね。
& : やっぱりなくなるのが嫌なんじゃないですか。
H : うんうん、たぶんそうなんやと思う。諦めもあるんやけど、諦めのほうがたぶん大きいんやけど、なくなるのが嫌なのかなぁと。
& : あっ、ちなみにその妄想するのが終わったのってどのくらいなんですか?
H : 大学を卒業するくらいかな。

& : かなり長いっすね(笑)。林さんそれめちゃくちゃ長いですよ。
H : 高校卒業くらいまでは間違いなく。船のことはもう考えていなかったけど。
& : それは長いっすね(笑)。
H : うん長いかも、長いかな。そういえば小学校の頃とか、国語の本を読んだらビジュアルが浮かんできてた。
& : そうなんですか。
H : 主人公の気持ちになって回答するから、国語の先生的には「そういことを聞いてるんじゃない」と(笑)。
& : なるほど、なるほど(笑)。
H : ということもありました思い出した。
& : どういう理由で妄想できなくなったんですか?それともできるけどしなくなったんですか?
H : しなくなったのかなぁ…。いや、まあ今でもできると思う。作品つくるときはイメージを組み立てたりするし。たぶんでもちょっと違う部分を…だいぶ違う部分を使っているんだと思うけど。
& : 作品はやっぱり表現なんで、人に伝わるようにするというところで、もう一つ違う俯瞰の目線はいれないといけない。
H : うんうん、作品はかなり俯瞰して冷静につくってるけど…。話が繋がって来てますね。
& : そうですね、最初よりだいぶ繋がりましたね。でも世界が並走している感じっていうのは、ちょっと特殊な感じがするような気がしますけど。
H : 本当に?みんなそういうものかと思ってた。
& : 並走してるっていう意識はないかもしれないですね。
H : 続きはまた今度喋りますか。
& : ああ、来週でもいいですけどね。
H : じゃあ来週までに…。
& : そうですね、思い出すとこと繋がるとこがなんかあったらお願いします(Vol.2[後半]へ続く)。
林勇気 さん


このページの一番上へ