アーティスト紹介

長谷川一郎

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INTERVIEW WITH HASEGAWA ICHIRO 2009.08.27

作品について - 世界の構造を示した図を表現し、人に伝えたい

&ART(以下、&) : 長谷川さんは風景をモチーフにすることが多いですが、あれはどこの風景なのでしょうか。
give me your mayonnaise 2009

give me your mayonnaise 2009

長谷川一郎(以下、H) : 特定の風景を表そうとしているわけではなく、自分の生活している、圏内にある風景ですね。
& : 作品のコンセプトはなんでしょうか。
H : 単純に世界の構造を示した図を表現し、人に伝えたいと思っています。「草むらができている状態」や「蟻が行列になっているところ」とかと、「高いところから見下ろした人間の街並み」が同じように感じられて、そこには共通のしくみがあるんじゃないかというのが、キーワードですかね。
& : 長谷川さんのこれまでの作品からは、「個が集まって集団を作る」という本質的な構造をモチーフにしつつ、ペインティングの作業自体も、小さい線や点の集積で、全体を作ったりと、「物事の本質」と「描くという行為」がすごく近いところにあるということを感じますね。
H : そういう風に見てくれたら、うれしいなと思います。
& : 長谷川さんにとって「描く」こととはどういうことでしょう?
H : 目の前に紙と鉛筆があったらできる行為で・・・むしろ手と地面があればできる根源的な表現手段です。だから、作者と素材の距離が一番近いものの一つかなと思っていて、自分の中で一番しっくりくるのが、描くという行為なのかなと思っています。
& : 描くことで人と関わるのと、その他の仕事などで関わるのとは違いますよね。
H : 作品で関わった方が嘘がつけないから、他人と仲良くなりやすいというか・・・
体裁をいくら気にしても逃げ道がもともとないところでやっているから、人とより深いところで関わることになるんです。自分の価値観を提出しているわけなんで、共感してくれなければ合わないですし、共感してくれれば合うという基準にはなりやすいのかなと思います。

& : 大学コンソーシアム主催の第一回学生アートオークションで作品が売れましたね。 どういう経緯で出品したのでしょうか?
H : 各大学に案内が来ていて、担当の先生に声をかけていただいて出品することとなりました。当時は今より景気がよく、普段ギャラリーで販売するよりもだいぶ高く売れました。その時は大学院を出たばかりだったので、自分の作品にそんな値がついたことにびっくりしました。参加したことにはすごくいい面もあったんですが、あくまで社会と関わるための練習試合ですね。それが社会そのものだと思ってしまうとやっていけないですね。
& : アートオークションに参加するだけでなく、ご自身でも2007年に「チャリティー・アートオークション」を企画・運営されていましたね。
H : 友達がデザインの事務所をやっていて、海外支援をしているNPO団体の広報物を作っているんです。そこに「チャリティーイベントをしたい」という依頼がきたのがきっかけで、声をかけていただきました。現実はなかなか集客に関しても思うようにいかず、支出と、収入の折り合いをつけるのが厳しかったです。でも、やり続けたいことではあります。
長谷川一郎 さん

京都について - 街中も、街から外れてもキレイな場所が多いので、すごく好きです

& : 長谷川さんは、京都嵯峨芸術大学(以下、嵯峨芸)出身ですが、同大学を選択した理由は「桂川がきれいだったから」だそうですね。
H : いくつかの京都の美術大学を受けていたのですが、嵯峨芸の受験の時、桂川を見て「ここ行きたいな」と直感的に感じました。
& : 京都での生活が長いですが京都の魅力はどういうところでしょうか。
H : 京都の風景は街中も、街から外れてもキレイな場所が多いのですごく好きです。 あとは大学が多いので、在学中からよその美大に足を運ぶ機会もあり、友達ができたり情報を共有できるのもいいところですね。
& : 学生の時に京都市の嵐山小学校で展覧会を開催していましたが、どういう流れで展示することになったのでしょうか。
H : その時はギャラリーじゃないところで展覧会をやりたいという考えがあって、近くにたまたま小学校があったので、小学生などを巻き込んで学校内の空間を使ったような作品ができたらいいなと思い立って、嵯峨芸の友人たちと話し、小学校に企画書を持ち込みました。
& : どのような企画内容だったのでしょうか。
H : 僕の作品は小学校の先生全員の肖像画を描いて、その先生の担任しているクラスに飾るというものでした。他の人の展示では小学生が単純に楽しめるものをと思い、大きなダンボールでできた作品が展示されたのですが、触れたらダメなものとなると面白くないと思って何も言わなかったら、子供たちが楽しみすぎたせいで全部潰されてしまいました。(笑)

& : 小学生や、先生の反応はどうでしたか。
H : 小学生の時って他の学年の教室に行くとなるとけっこう怖いイメージがあるじゃないですか、それなのに学内探検ツアーみたいなものをやっていた生徒がいたらしくて、いろんな先生の顔を見に行って楽しんでくれたというのを聞いてうれしかったですね。あと、「肖像画を描かせてください」とお願いすると、はじめは「そんなん嫌やわー」と言っていた先生が、最後に「ほしい人には肖像画進呈します」と言った時に、「ほしい」とちゃんと言ってくれたのはうれしかったです。
& : お話を聞いていると、長谷川さんが絵を描くことを通して他の人々と繋がろうとしているその行為にすごく絵画の可能性を感じますね。
F/E(展示風景)

F/E(展示風景)

H : そうですね、絵画をツールとして人と関わりたいという気持ちはもちろんあって、それが絵画の可能性だと思うんですが・・・その一方で、やる人間が有名であればある程、でかいことができる気がしていて。名の知られていない画家がやるよりも、ある程度誰が見てもうまい絵が描ける人がやらないと、自称画家の人がやっているだけでは説得力がないので。そのためには社会的な評価というのも、必要な要素だなと思います。例えば自分が有名になったとしたら、それをまた利用して新たな展開ができるんじゃないかと考えています。
& : 長谷川さんは色々な人に作品を見ていただきたいということを、考えていますよね。
H : 例えばさっきの小学校の展示の話だと、小学校の関係者しか見ることができないという限定があったりするんですけど、それは自分が色々な所に行ったらいいだけの話で、基本的には、大人子供、男女問わず、色々な人に見てもらいたいと思っています。

社会について - 社会は人。そこに自分がどれだけ関われるか

& : 現在週に一度、精神科・心療内科で、レクリエーションとして絵画教室をしていますね。
H : 知り合いの病院が、通院している方を対象に様々な教室を開いていて、そこで週1回、3時間絵を描く時間を担当しています。そこでは、みんな共通のものを描くわけじゃなくて、それぞれ好きなものを自由に描いてもらっています。絵画が好きだったり、アニメのようなものを書いたり。必ず発表しなければならないとか、上達しなければならないというのはないので、本当に楽しめる範囲でやってもらえるような感じですね。
& : 題材を決めて教えるというわけではないんですね。
H : そうですね、ただ下手をすると、「あの人上手いなぁ」とか「自分下手だなぁ」ということになるので、はじめに、ほんのちょっとだけ色々なアーティストの作品を見せて、「この人はこういう風に作品を作っています」というのを、勉強という感じでなく、レクチャーしています。美術の世界は色々な価値観を認めあえる世界だと思うのですが、下手をすると「自分ってなに?」となってしまうので。
長谷川一郎 さん

& : 何歳くらいの方が多いですか。
H : 一番若くても中学生くらいで、高校とか大学生とか、会社を休職中のひととか、年齢はばらばらです。楽しむことができないような精神状態の人が多い中で、好きな人はすごくはまって「絵を描くのが楽しい」と言ってくれて。そういう中で、僕としては治療という感覚でなくて、「自分がやってて楽しいと思うことを、相手にも楽しいと思ってほしい」という気持ちでやっています。病名を聞いても自分にわかることは少ないので、そこは気にしないでおこうと思って接しています。
& : さまざまな活動をしながら社会と接していますが、長谷川さんにとって社会というのはどういうものでしょうか。
H : 今考えているのは、社会は人で、そこに自分がどれだけ関われるかということ、そしてどれだけ絵を描けて発表できるかということです。視点としては、人の外から世の中を見たいと思っているけれど、どうしようもないくらい自分が人間であることもわかっていて・・・。そういう中で、たぶんすごく人が、好きなんだろうなというのがあって。
& : 社会においてアーティストは、どのような役割を持っているとお考えでしょうか。
H : アートというのは人によって捉え方が違うと思っていて、そういうジャンルというのは意外に珍しいんじゃないかと思います。アーティストが作品を作って、いろんなものの見方や価値観をプレゼンテーションすることで、人に縛られなくてもいいと思ってもらうような・・・世界平和ですね(笑)。
& : ゆくゆくは世界平和ですね(笑)
H : アートは人が絡まないとできないものですし、人と人とが、直につながってこそ成り立つものですからね。

今後の活動について - 「作品を作っている人」という立場で人と関わりたい

& : 今後どのように活動を展開していきたいですか。
H : ギャラリーでの展示は継続してやっていきたいですし、将来的には美術館でも展示することを目標にしています。ただ「作品でものを伝える」という一方で、ワークショップなどを通して、「作品を作っている人」という立場で人と関わりたいな、と思います。

美術の世界で評価されたいし、評価されたら別のところでその評価を武器に活動をしていきたいというのはありますね。 それは説得力をいかにもたせられるかという自分のスキル次第なので、あとは行動あるのみですね。


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